訪問看護ステーションの管理者にとって、看護師の採用が集まらないことは深刻な経営課題です。日本看護協会の調査によると、2024年度の訪問看護ステーションの有効求人倍率は4.54倍にのぼり、病院(約2~3倍)を大きく上回っています。求人を出しても応募がない、採用してもすぐに辞めてしまう――そんなお悩みを抱える管理者の方に向けて、この記事では訪問看護で看護師を確保するための5つの具体的な対策をお伝えします。
訪問看護の採用が集まらない3つの理由
対策を考える前に、まず訪問看護の採用がなぜ難しいのかを整理しておきましょう。原因を正しく理解することで、効果的な対策を打つことができます。
理由1:病院と比べて訪問看護の認知度が低い
看護師の多くは、新卒で病院に就職します。訪問看護という働き方を知らない、あるいは知っていても具体的な業務内容をイメージできない看護師が少なくありません。訪問看護ステーションにおける25歳未満の看護師の割合はわずか0.3%というデータもあり、若手の参入が特に少ない状況です。
理由2:一人で訪問することへの不安
病院では常に周囲にスタッフがいますが、訪問看護では基本的に一人で利用者の自宅を訪問します。この「一人で判断しなければならない」という点に不安を感じ、訪問看護への転職をためらう看護師は多いです。教育体制やサポート体制が整っていることを伝えきれていないことが、応募につながらない一因になっています。
理由3:求人情報で訪問看護の魅力が伝わっていない
ハローワークや求人サイトに掲載している求人票が、給与・勤務時間・休日といった条件面の羅列になっていませんか。訪問看護ならではのやりがいや、ステーションの雰囲気が伝わらない求人では、他の求人に埋もれてしまいます。求人倍率が4倍を超える状況では、求職者に「ここで働きたい」と思ってもらえる情報発信が不可欠です。
対策1:求人票の書き方を見直す
採用活動の第一歩として、まず求人票の内容を見直しましょう。ハローワークやIndeedに掲載する求人票は、多くの求職者が最初に目にする情報です。ここで興味を持ってもらえなければ、応募にはつながりません。
条件の羅列から「働くイメージ」が湧く内容へ
給与・勤務時間・福利厚生はもちろん大切ですが、それだけでは他のステーションとの差別化ができません。以下のような情報を具体的に盛り込むことで、求職者が働くイメージを持てるようになります。
- 1日のスケジュール例:「9:00出勤、午前2件訪問、12:00昼休憩、午後2件訪問、16:30記録、17:30退勤」のように具体的に記載する
- 訪問エリアと移動手段:「○○市内が中心、社用車あり、1件あたりの移動は平均15分」など
- 教育・サポート体制:「入職後3ヶ月は先輩と同行訪問」「24時間のオンコール体制は管理者が対応」など
- スタッフの声:「子育て中のスタッフが多く、急なお休みも協力し合える環境です」など
求人票で最も大切なのは「正直さ」です。実態以上に良く見せても、入職後のギャップで早期離職につながります。ステーションの良い点だけでなく、課題や求める人物像も率直に伝えることで、ミスマッチを防げます。
対策2:ホームページに採用ページを充実させる
求人票を見て興味を持った看護師が次にとる行動は、ステーションのホームページを検索することです。ところが、ホームページがない、あるいは採用情報がほとんど載っていないステーションが少なくありません。これは大きな機会損失です。
求職者はホームページで「職場の雰囲気」を確認する
求人票だけでは伝えきれない情報を、ホームページで補うことができます。特に採用ページでは以下の要素が効果的です。
- スタッフ紹介:実際に働いている看護師の写真とコメント(入職の経緯、やりがい、1日の流れなど)
- ステーションの理念・方針:どのような看護を大切にしているか
- 教育・研修制度:入職後のフォロー体制を具体的に示す
- 募集要項:最新の募集状況、給与、勤務条件をわかりやすく記載する
- 応募フォーム:ホームページから直接応募できる導線を用意する
ホームページは24時間365日、求職者に情報を届けてくれる「採用担当者」のような存在です。求人媒体への掲載費は毎月かかりますが、ホームページは一度作れば継続的に採用効果を発揮します。まだホームページをお持ちでない場合や、採用ページがない場合は、早めに整備することをおすすめします。
ホームページ制作の費用について詳しく知りたい方は、「訪問看護ステーションのHP制作費用相場は?賢い選び方を解説」の記事もご参照ください。
ほうかんWEBでは、採用に強い訪問看護専門のホームページを制作しています。スタッフ紹介ページや採用ページの作成も含め、訪問看護の採用課題を理解したうえでサイト設計を行います。詳しくは制作内容ページをご覧ください。
対策3:SNS・Indeedなど複数チャネルで発信する
ハローワークだけに頼る採用活動では、求職者との接点が限られてしまいます。現在の看護師の求職活動は多様化しており、複数のチャネルを活用して情報を届けることが重要です。
主な採用チャネルと特徴
- ハローワーク:無料で利用可能。幅広い年齢層にリーチできるが、掲載情報に制限がある
- Indeed・求人ボックスなどの求人検索エンジン:無料掲載も可能。ホームページの採用ページと連携させると効果的
- 看護師専門の転職サイト・人材紹介:成果報酬型が多く費用は高め(年収の20~35%程度)だが、すぐに人材が必要な場合に有効
- Instagram・Facebook:日常の業務風景やスタッフの様子を発信し、ステーションの雰囲気を伝える。採用直結ではないが、認知度の向上に効果がある
複数チャネルの「受け皿」としてのホームページ
どのチャネルから求職者が来ても、最終的にはホームページで詳細情報を確認するという流れが一般的です。SNSやIndeedで興味を持ってもらい、ホームページの採用ページで応募につなげるという導線を意識しましょう。採用チャネルは「入口」、ホームページは「受け皿」と考えると整理しやすくなります。
対策4:職場見学・体験入職を受け入れる
訪問看護に興味はあるが、実際の業務や職場の雰囲気がわからず応募に踏み切れない――そんな求職者は少なくありません。職場見学や体験入職の受け入れは、こうした不安を解消するために非常に効果的な方法です。
半日見学から始めるのがおすすめ
いきなりフルタイムの体験入職はハードルが高いため、まずは半日程度の見学から始めるとよいでしょう。以下のような内容を組み込むと、求職者に安心感を与えられます。
- 管理者・先輩看護師との面談:ステーションの理念や教育体制について説明する
- 同行訪問:実際の訪問に同行してもらい、業務内容を体感してもらう
- スタッフとの座談会:現場のスタッフと気軽に話せる時間を設ける
地域の病院に対して「訪問看護1日研修」を案内し、病棟看護師に在宅医療の現場を見てもらう取り組みを行っているステーションもあります。将来の転職候補として自ステーションを認知してもらうことができるため、中長期的な採用戦略としても有効です。
職場見学・体験入職の情報は、ホームページに明記しておきましょう。「見学随時受付中」「体験入職あり」と記載するだけでも、応募のハードルを下げる効果があります。
対策5:働きやすい職場環境を整える
採用が集まらない原因は、求人活動だけにあるとは限りません。そもそも「働き続けたいと思える職場かどうか」は、採用にも直結します。離職率が高いステーションは常に採用活動が必要になり、コストも労力もかさみます。定着率の改善は、採用難を根本から解決する対策です。
看護師が訪問看護を辞める主な理由
- オンコール対応の負担が大きい
- 一人での訪問に対する精神的なプレッシャー
- 教育体制が不十分で、スキルアップが見込めない
- 人間関係や管理者とのコミュニケーション不足
- 給与や待遇面への不満
具体的な改善策
- オンコール体制の見直し:当番の頻度を減らす、管理者が一次対応するなど、負担を分散させる仕組みをつくる
- 定期的なカンファレンス:一人で抱え込まないよう、チームで利用者の情報を共有する場を設ける
- 段階的な教育プログラム:入職後の同行訪問期間を十分に確保し、段階的に独り立ちできる体制を整える
- ICTツールの導入:記録業務の効率化により、直行直帰や柔軟な働き方を実現する
- 処遇改善:訪問看護も処遇改善加算の対象です。最新の介護報酬改定の内容を確認し、制度を活用した給与改善を検討しましょう
職場環境の改善は、既存スタッフの満足度を高めるだけでなく、口コミや紹介による採用にもつながります。実際に、スタッフからの紹介(リファラル採用)は訪問看護業界でも有効な採用手段の一つです。働きやすい環境が整っていれば、スタッフが自信を持って知人に紹介してくれるようになります。
まとめ
訪問看護の採用が集まらない状況を改善するためには、複数の対策を組み合わせて取り組むことが大切です。この記事でご紹介した5つの対策を改めて整理します。
- 求人票の書き方を見直す:条件の羅列ではなく、働くイメージが湧く具体的な情報を盛り込む
- ホームページに採用ページを充実させる:スタッフ紹介や教育体制など、求人票では伝えきれない情報を掲載する
- SNS・Indeedなど複数チャネルで発信する:接点を増やし、ホームページで受け止める導線をつくる
- 職場見学・体験入職を受け入れる:応募前の不安を解消し、応募のハードルを下げる
- 働きやすい職場環境を整える:定着率の改善が、採用難の根本的な解決策になる
訪問看護ステーションの人材確保は、一朝一夕で解決する問題ではありません。しかし、できることから一つずつ取り組むことで、少しずつ採用の状況は変わっていきます。まずは求人票の見直しとホームページの整備から始めてみてはいかがでしょうか。利用者を増やす方法と合わせて取り組みたい方は、「訪問看護の利用者を増やすには?今すぐできる5つの方法」の記事もあわせてご覧ください。
この記事を監修したチーム
ほうかんWEB編集部 ── 訪問看護の現場経験を持つ医療職と、医療広告ガイドラインに精通したHP制作の専門チームが共同で記事を作成・監修しています。
