訪問看護ステーションの開業を検討する際、「実際にどれくらいの売上が見込めるのか」「経費はいくらかかるのか」「いつ頃から黒字になるのか」は最も気になるポイントではないでしょうか。この記事では、訪問看護ステーションの収益構造を整理したうえで、看護師3名体制を想定した具体的な収支シミュレーションを表付きでご紹介します。開業1年目から3年目までの収支推移や黒字化の目安、売上を伸ばすためのポイントまで、経営計画を立てるうえで必要な数字をまとめました。

訪問看護の収益構造(介護保険・医療保険の仕組み)

訪問看護ステーションの収入は、大きく「介護保険による報酬」と「医療保険による報酬」の2種類に分かれます。どちらの保険が適用されるかは、利用者の状態や疾患によって決まります。

介護保険の報酬

要介護認定(要支援1~2、要介護1~5)を受けた方が対象です。訪問時間に応じて報酬単価が設定されており、20分未満から90分以上まで区分があります。介護保険の利用者は訪問看護ステーション全体の約6~7割を占めるのが一般的です。報酬は国が定める単位数に地域ごとの単価(1単位あたり10円~11.40円)を掛けて計算されます。

医療保険の報酬

介護保険の対象とならない方、たとえば小児や難病指定を受けた方、がん末期の方などが医療保険での訪問看護の対象となります。医療保険の報酬は「訪問看護基本療養費」として1回あたりの金額が定められており、週3回までの訪問が基本です。特定の疾患については週4回以上の訪問が認められるケースもあります。

報酬の入金には約2ヶ月のタイムラグがあります。介護報酬・診療報酬はサービス提供月の翌月10日までに請求し、その翌月(サービス提供月から約2ヶ月後)に入金されます。この期間の運転資金を確保しておくことが経営の安定に不可欠です。資金準備については開業資金の記事で詳しく解説しています。

訪問看護の報酬単価の目安

訪問看護の報酬単価は、訪問時間や保険の種類によって異なります。以下に、主な報酬単価の目安を整理しました。なお、金額は令和6年度の介護報酬改定に基づく概算値であり、地域区分や加算の有無で変動します。最新の正確な単価は厚生労働省の訪問看護に関するページをご確認ください。

介護保険:訪問看護費(看護師の場合)

訪問時間 単位数(目安) 金額換算(1単位10円の場合)
20分未満 313単位 約3,130円
30分未満 470単位 約4,700円
30分以上60分未満 821単位 約8,210円
60分以上90分未満 1,125単位 約11,250円

医療保険:訪問看護基本療養費

区分 金額(目安)
訪問看護基本療養費(I)── 週3回まで 約5,550円/回
訪問看護基本療養費(I)── 週4回以上(特定疾患等) 約6,550円/回

上記はあくまで基本報酬であり、実際にはこれに各種加算(緊急時訪問看護加算、特別管理加算、ターミナルケア加算など)が上乗せされます。加算の算定状況によって、1件あたりの実質単価は大きく変わります。

月間売上シミュレーション(看護師3名体制の例)

ここでは、看護師3名(常勤換算2.5人)体制の訪問看護ステーションを想定し、月間売上のシミュレーションを行います。

前提条件

  • 看護師3名(うち管理者1名、常勤換算2.5人)
  • 1人あたり1日の訪問件数:4~5件
  • 1件あたりの平均訪問時間:30分以上60分未満(介護保険)が中心
  • 月の稼働日数:22日
  • 介護保険と医療保険の比率:7対3
  • 各種加算を含む1件あたりの平均単価:約8,500円

月間売上の計算例

項目 計算式 金額
看護師1人あたりの月間訪問件数 4.5件/日 x 22日 99件
ステーション全体の月間訪問件数 99件 x 2.5人(常勤換算) 約248件
1件あたりの平均単価(加算込み) -- 約8,500円
月間売上合計 248件 x 8,500円 約210万円

上記はあくまで目安ですが、看護師3名体制で月間約210万円の売上が一つの基準になります。訪問件数が増えたり、加算の算定が進んだりすれば、月間250万~300万円まで売上を伸ばすことも十分に可能です。

訪問件数と単価の両方を意識することが大切です。訪問件数を増やすだけでなく、緊急時訪問看護加算や特別管理加算などを適切に算定することで、1件あたりの単価を引き上げることができます。加算の算定要件は厚生労働省のページで確認できます。

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毎月の経費内訳

訪問看護ステーションの経営では、毎月の固定費をどれだけ抑えられるかが利益に直結します。看護師3名体制を想定した場合の、主な経費内訳は以下のとおりです。

経費項目 月額目安 備考
人件費(給与・社会保険料) 120万~150万円 看護師3名分。1人あたり月額40~50万円(社会保険料含む)
家賃 8万~15万円 事務所の賃貸料。地域によって大きく異なる
車両費 3万~6万円 リース料、ガソリン代、駐車場代、保険料
通信・ICT費 3万~5万円 電話、インターネット、電子カルテ月額利用料
消耗品・衛生材料 2万~4万円 手袋、マスク、事務用品など
広告宣伝費 1万~3万円 ホームページ維持費、パンフレット印刷費など
その他(税理士顧問料等) 3万~5万円 税理士、社労士への顧問料、雑費
月額経費合計 約140万~190万円 人件費が全体の約65~75%を占める

最も大きな経費は人件費で、月額経費全体の65~75%を占めます。訪問看護ステーションの経営では、人件費率(売上に対する人件費の割合)を60~70%以内に抑えることが健全な経営の目安とされています。

収支シミュレーション例(開業1年目~3年目)

開業直後は利用者が少ないため赤字からスタートするのが一般的です。利用者の獲得が進むにつれて売上が伸び、一定の訪問件数を超えた時点で黒字に転換します。以下は、看護師3名体制で開業した場合の、1年目から3年目までの収支推移のシミュレーション例です。

項目 1年目 2年目 3年目
月間平均訪問件数 150件 250件 300件
月間平均売上 約130万円 約215万円 約260万円
年間売上 約1,560万円 約2,580万円 約3,120万円
月間平均経費 約165万円 約170万円 約180万円
年間経費 約1,980万円 約2,040万円 約2,160万円
年間損益 約-420万円 約+540万円 約+960万円

1年目は利用者の立ち上げ期間のため赤字となりますが、2年目に入ると利用者数が安定し、年間で約540万円の黒字を確保できる計算です。3年目には訪問件数がさらに増え、看護師の増員を検討できる段階に入ります。

1年目の赤字を想定した資金計画が不可欠です。上記のシミュレーションでは1年目に約420万円の赤字が発生しています。この赤字を補填するための運転資金を、開業前に確保しておく必要があります。開業資金の調達方法については開業資金の記事をご参照ください。

黒字化の目安と損益分岐点

訪問看護ステーションが単月で黒字化する(月間の売上が経費を上回る)までの期間は、一般的に開業後6ヶ月~12ヶ月が目安です。

損益分岐点の計算

月額経費を約165万円、1件あたりの平均単価を8,500円と仮定した場合、損益分岐点は以下のように求められます。

  • 損益分岐点の月間訪問件数:165万円 / 8,500円 = 約194件
  • 損益分岐点の月間利用者数:月に1人あたり平均8回の訪問として、約25名

つまり、月間で約194件(利用者数約25名)の訪問を実施できれば、単月で黒字に転換できる計算です。看護師3名体制であれば、1人あたり1日3件強の訪問で到達可能な数字です。

黒字化を早めるために

黒字化までの期間を短縮するには、開業前からの準備が重要です。開業前に地域のケアマネージャーや医療機関への挨拶回りを行い、開業直後から紹介が得られるよう人脈を築いておきましょう。利用者の獲得方法については、利用者を増やすための方法の記事が参考になります。

売上を伸ばすためのポイント

訪問看護ステーションの売上は「訪問件数 x 1件あたりの単価」で決まります。売上を伸ばすには、この両方を高める取り組みが必要です。

1. 各種加算を確実に算定する

訪問看護には多くの加算が設定されており、算定要件を満たすことで基本報酬に上乗せできます。特に以下の加算は、体制を整えれば比較的算定しやすいものです。

  • 緊急時訪問看護加算:24時間対応できる体制を整備した場合に、利用者1人あたり月額で算定
  • 特別管理加算:医療的ケア(在宅酸素、人工呼吸器、褥瘡管理など)が必要な利用者に対して算定
  • ターミナルケア加算:在宅でのターミナルケア(看取り)を実施した場合に算定
  • サービス提供体制強化加算:勤続年数の長い職員の割合が基準を満たす場合に算定

2. 訪問件数を最適化する

看護師1人あたりの1日の訪問件数は、移動時間や記録作成の時間を考慮すると4~6件が現実的なラインです。訪問エリアを絞って移動時間を短縮したり、効率的な訪問ルートを組むことで、1日あたりの訪問件数を増やすことができます。

3. ケアマネージャーとの関係を強化する

新規利用者の紹介元として最も多いのがケアマネージャーです。定期的な訪問報告やサービス担当者会議への積極的な参加など、ケアマネージャーとの信頼関係を築くことが安定的な利用者獲得につながります。

4. ホームページで情報発信を行う

ステーションの特色や対応可能な疾患、スタッフ紹介などをホームページに掲載することで、ケアマネージャーや利用者家族からの信頼を得やすくなります。医療の現場を知るチームが制作した専門的なホームページは、営業活動の強力な後押しになります。

5. 医療保険の利用者も積極的に受け入れる

小児や難病指定の利用者など、医療保険で訪問看護を利用される方は、訪問回数が多くなる傾向があります。医療保険の利用者を受け入れることで、1人あたりの売上が大きくなり、経営の安定にもつながります。

よくある質問

Q. 訪問看護ステーションの売上はどのくらいが目安ですか?

看護師3名体制(常勤換算2.5人)の場合、月間売上の目安は約200万~300万円です。1日あたりの訪問件数や訪問時間、加算の算定状況によって変動します。利用者数が安定する開業2年目以降は月間300万円以上を目指すことも可能です。

Q. 訪問看護ステーションの黒字化にはどのくらいかかりますか?

一般的には開業後6ヶ月~12ヶ月で単月黒字化するケースが多いです。ただし、利用者の獲得スピードやスタッフの人数、地域の競合状況によって差があります。開業初期はケアマネージャーへの営業活動を積極的に行い、早期の利用者確保を目指すことが重要です。

Q. 訪問看護の報酬は介護保険と医療保険で違いますか?

はい、介護保険と医療保険では報酬体系が異なります。介護保険は要介護・要支援の認定を受けた方が対象で、20分未満から90分以上まで訪問時間に応じた報酬区分があります。医療保険は介護保険の対象外となる方(小児や難病指定の方など)が対象で、週3回までの訪問で1回あたり約5,550円が基本単位です。

Q. 訪問看護ステーションの経費で最も大きいのは何ですか?

最も大きい経費は人件費です。売上全体の60~70%を占めるのが一般的で、看護師3名体制の場合、月額120万~150万円程度が人件費となります。次いで家賃、車両費、通信費の順に大きくなります。

Q. 売上を伸ばすために何から始めればよいですか?

まずはケアマネージャーへの営業活動を強化し、新規利用者の紹介を増やすことが最も効果的です。同時に、特別管理加算やターミナルケア加算など各種加算の算定要件を満たす体制を整えることで、1件あたりの単価を上げることも重要です。また、ホームページを活用した情報発信も長期的な集客につながります。

まとめ

訪問看護ステーションの収支シミュレーションについて、改めて要点を整理します。

  • 収入は介護保険と医療保険の2つ。介護保険の利用者が全体の6~7割を占めるのが一般的
  • 看護師3名体制の月間売上の目安は約210万円。加算の算定が進めば250万~300万円も見込める
  • 最大の経費は人件費で、月額経費の65~75%を占める。月額経費全体の目安は約140万~190万円
  • 開業1年目は赤字が一般的。2年目以降に利用者が安定し、年間500万円以上の黒字を目指せる
  • 黒字化の目安は開業後6~12ヶ月。月間約194件(利用者約25名)が損益分岐点
  • 売上を伸ばすには、加算の算定強化・訪問件数の最適化・ケアマネとの関係構築がポイント

収支シミュレーションはあくまで目安ですが、事業計画書を作成する際の参考にしていただければ幸いです。開業前に現実的な数字を把握しておくことで、資金調達の準備や経営判断がしやすくなります。開業手続きの全体像については届出・手続きガイドもあわせてご覧ください。

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この記事を監修したチーム

ほうかんWEB編集部 ── 訪問看護の現場経験を持つ医療職と、医療広告ガイドラインに精通したHP制作の専門チームが共同で記事を作成・監修しています。

参考・出典