「訪問看護ステーションを開業したいけれど、失敗したらどうしよう」「開業してもうまくいかないケースが多いと聞いて不安」--そんな声をお持ちの方は少なくありません。

実際に、全国訪問看護事業協会の統計によると、毎年約600件前後の訪問看護ステーションが廃止届を提出しています。需要が伸びている業界であっても、事前の準備や運営に不備があれば、経営がうまくいかなくなるリスクは確実に存在します。

この記事では、訪問看護ステーションの開業で失敗する主な原因を5つに分類し、それぞれの具体的な対策をまとめました。医療の現場を知るチームが、実際の失敗事例をもとに解説しますので、開業前の準備にお役立てください。

訪問看護ステーション開業の廃業状況

まず、訪問看護ステーションの開業と廃業の実態を数字で確認しておきましょう。

厚生労働省の調査によると、2023年時点で全国の訪問看護ステーション数は約15,000件を超えています。高齢化の進展とともに事業所数は増加を続けていますが、一方で毎年一定数の事業所が廃止・休止に追い込まれています。

項目 データ
全国の事業所数 約15,000件以上(2023年時点)
年間の新規開設数 約1,500〜2,000件
年間の廃止・休止数 約600〜800件
廃止の多い時期 開業から1〜3年以内

新規に開設される事業所のうち、約3〜4割が数年以内に廃止・休止となっている計算です。訪問看護の需要は確実に拡大していますが、開業すれば自動的にうまくいくわけではありません。成功と失敗を分けるのは、開業前の準備と開業後の運営の質です。

訪問看護ステーションの廃止理由として多いのは「経営難」「人員基準を満たせなくなった」「利用者の確保が困難」などです。これらは、開業前の計画段階で対策を講じることで回避できるケースが多くあります。

失敗原因1: 資金計画の甘さ -- 運転資金不足による経営破綻

訪問看護ステーション開業で最も多い失敗原因が、資金計画の甘さです。開業時の初期費用だけを見積もり、開業後に必要な運転資金を十分に確保していないケースが後を絶ちません。

よくある失敗パターン: 「開業資金800万円を用意したが、介護報酬の入金が遅く、3ヶ月目で人件費が払えなくなった」「初期費用に資金を使いすぎて、運転資金が残らなかった」

なぜ資金ショートが起きるのか

訪問看護の介護報酬・診療報酬は、サービスを提供した月の翌々月に入金されます。たとえば4月にサービスを提供した場合、その報酬が振り込まれるのは6月です。つまり、開業後の最初の2〜3ヶ月は、ほぼ収入がゼロの状態で人件費や家賃を支払い続けなければなりません。

訪問看護ステーションの開業資金の目安は500〜1,500万円ですが、そのうち運転資金(月々のランニングコスト)として最低でも6ヶ月分を確保することが重要です。

月々のランニングコスト例 金額の目安
人件費(看護師3名) 月90〜120万円
事務所家賃 月10〜20万円
車両維持費・ガソリン代 月5〜10万円
通信費・システム利用料 月3〜5万円
その他(消耗品、保険料等) 月3〜5万円
合計 月111〜160万円
対策: 運転資金は最低6ヶ月分(約700〜1,000万円)を確保しましょう。日本政策金融公庫の創業融資や自治体の補助金・助成金制度も積極的に活用してください。また、開業前に詳細な月次収支シミュレーションを作成し、損益分岐点(黒字化の時期)を明確にしておくことが大切です。

失敗原因2: 人材確保・定着の失敗 -- 看護師が集まらない・辞めてしまう

訪問看護ステーションの運営は、看護師の確保にかかっているといっても過言ではありません。人員基準として常勤換算2.5人以上の看護職員が必要であり、この基準を下回ると事業の継続ができなくなります。

よくある失敗パターン: 「開業時に採用した看護師が半年で2名退職し、人員基準を満たせなくなった」「求人を出しても応募がなく、開業日を延期せざるを得なかった」

看護師の採用が難しい理由

看護師の有効求人倍率は常に2倍以上で推移しており、特に訪問看護は病院と比べて知名度が低いため、採用のハードルが高い傾向にあります。さらに、訪問看護は一人で利用者のご自宅を訪問するため、病棟勤務とは異なるスキルや判断力が求められます。そのため「やってみたけど自分には合わなかった」と早期退職に至るケースも珍しくありません。

人材確保・定着のための対策

  • 複数の採用チャネルを活用する -- 看護師専門の求人サイト、ハローワーク、紹介会社、知人の紹介など、一つの方法に頼らず幅広くアプローチしましょう
  • 開業前から採用活動を始める -- 開業の4ヶ月以上前から求人を出し、余裕をもった採用計画を立てましょう
  • 働きやすい職場環境を整備する -- フレックスタイムや時短勤務など、柔軟な勤務形態を用意することで、子育て中の看護師なども採用しやすくなります
  • 教育・サポート体制を構築する -- 同行訪問やオンコールのバックアップ体制を整え、未経験者でも安心して働ける環境をつくりましょう
  • 自社のホームページで採用情報を発信する -- 職場の雰囲気やスタッフの声を掲載することで、応募前の不安を解消できます

看護師の採用・定着に課題を感じている方は、訪問看護の看護師採用対策の記事もご参照ください。

対策: 人員基準ギリギリでの開業は避けましょう。常勤換算3.0人以上を目標に採用し、1名が退職しても基準を維持できる体制を整えることが重要です。また、採用ページが充実したホームページを開業と同時に公開することで、継続的な採用につなげられます。

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失敗原因3: 営業・集客不足 -- 利用者が増えない

訪問看護ステーションを開業しても、利用者の紹介が来なければ売上は立ちません。特に開業初期は知名度がゼロの状態からスタートするため、積極的な営業活動が必要不可欠です。

よくある失敗パターン: 「開業すれば自然と利用者が来ると思っていた」「営業に回る時間がなく、開業半年経っても利用者が5名しかいない」

訪問看護の利用者はどこから来るのか

訪問看護の利用者紹介は、主に以下のルートから発生します。

  • ケアマネージャーからの紹介(介護保険利用者の場合)-- 最も重要な紹介元
  • 病院・クリニックの退院支援部門からの紹介(医療保険利用者の場合)
  • 地域包括支援センターからの紹介
  • ホームページやGoogleビジネスプロフィール経由の問い合わせ

開業後に利用者を安定的に獲得するには、特にケアマネージャーや病院の退院支援部門との関係構築が重要です。しかし、看護師出身の経営者は「営業活動が苦手」という方も多く、この部分で苦戦するケースが見られます。

営業・集客力を高める対策

  • 開業前から地域の関係機関へ挨拶回りを行う -- 居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、近隣の医療機関を直接訪問しましょう
  • ステーションの強みを明確に伝える -- 「小児対応が可能」「精神科訪問看護に対応」「24時間対応」など、自院の特徴を一言で伝えられるようにしましょう
  • ホームページを開業と同時に公開する -- ケアマネージャーが連携先をWebで検索するケースが増えています。サービス内容やスタッフ紹介が掲載されたホームページは、信頼獲得の第一歩です
  • 定期的な訪問とフォローを継続する -- 一度の訪問で終わらず、月に1回程度のペースで関係機関を訪問し、空き状況や対応可能な利用者像を伝えましょう

利用者の増やし方についてより詳しく知りたい方は、訪問看護の利用者を増やす方法ケアマネ営業の記事もあわせてお読みください。

対策: 開業前に「月間の訪問件数目標」と「損益分岐点に到達するまでの期間」を設定し、逆算して必要な営業活動量を計画しましょう。営業が苦手な場合は、ホームページやGoogleビジネスプロフィールなどオンラインでの情報発信を充実させることで、問い合わせにつなげることも可能です。

失敗原因4: 立地選びのミス -- 需要と競合を見誤る

訪問看護ステーションの開業場所は、事業の成否を大きく左右します。立地選びで多い失敗が、地域の需要調査を行わずに開業してしまうケースです。

よくある失敗パターン: 「自宅の近くで開業したが、周辺に訪問看護ステーションが10件以上あり、利用者の紹介がほとんど来なかった」「高齢者が少ないエリアを選んでしまい、需要が伸びなかった」

立地選びで確認すべきポイント

確認項目 確認方法
高齢者人口と将来推計 自治体の統計データ、国勢調査データを確認
競合ステーションの数と規模 介護サービス情報公表システムで検索
地域の医療・介護資源 近隣の病院、クリニック、居宅介護支援事業所の数を調査
訪問エリアのアクセス 車や自転車での移動時間、駐車場の確保状況を確認
事業所の視認性 看板が見える場所か、利用者や関係者が訪問しやすいかを確認
対策: 開業前に必ず地域の需要・競合調査を実施しましょう。自治体が公開している地域包括ケアに関する情報や介護保険事業計画も参考になります。また、自治体の介護保険課への事前相談で、地域の需給バランスについてアドバイスを受けられる場合もあります。

失敗原因5: 制度理解・運営知識の不足 -- 知らなかったでは済まないルール

訪問看護は介護保険法・健康保険法に基づくサービスです。制度の理解が不十分なまま開業すると、指定取消や報酬返還といった重大なリスクにつながります。

よくある失敗パターン: 「加算の算定要件を誤って理解しており、報酬を返還することになった」「運営基準を満たしていないことが実地指導で発覚した」「医療広告ガイドラインに違反するホームページを作成してしまった」

開業時に理解しておくべき制度・ルール

  • 介護保険法・健康保険法の訪問看護に関する基準 -- 人員基準、設備基準、運営基準の3つを正確に理解しましょう
  • 介護報酬・診療報酬の算定ルール -- 基本報酬、各種加算の算定要件、減算の条件を把握しましょう
  • 実地指導・監査への備え -- 開業後に行政の実地指導が行われます。記録の整備、契約書の管理、運営規程の遵守が必要です
  • 医療広告ガイドライン -- ホームページも医療広告規制の対象となります。虚偽や誇大な表現は使用できません
  • 個人情報保護法 -- 利用者の個人情報の適切な管理体制を構築する必要があります

開業の届出・手続きの全体像については、訪問看護ステーション開業の届出・手続きガイドで詳しく解説しています。

対策: 開業前に全国訪問看護事業協会や各都道府県の看護協会が実施する開業セミナーに参加しましょう。また、訪問看護に詳しい行政書士や税理士に相談し、指定申請や経営面でのサポートを受けることも有効です。制度改定は定期的に行われるため、開業後も最新情報を継続的に収集する姿勢が大切です。

開業前の失敗防止チェックリスト

ここまで紹介した5つの失敗原因を踏まえ、開業前に確認しておきたいポイントをチェックリストにまとめました。一つでもチェックが付かない項目がある場合は、開業前に対策を講じましょう。

資金計画

  • 月次の収支シミュレーションを作成している
  • 最低6ヶ月分の運転資金を確保している
  • 損益分岐点(黒字化の時期)を把握している
  • 融資や補助金・助成金の活用を検討している

人材確保

  • 常勤換算3.0人以上を目標に採用計画を立てている
  • 複数の採用チャネルを活用している
  • 給与・勤務条件を近隣の事業所と比較検討している
  • 教育・サポート体制を整備している

営業・集客

  • 開業前から関係機関への挨拶回りを実施している
  • ステーションの強み・特徴を明確にしている
  • ホームページを開業日までに公開する準備をしている
  • Googleビジネスプロフィールに登録している

立地・エリア

  • 開業エリアの高齢者人口・将来推計を調査している
  • 競合ステーションの数と特徴を把握している
  • 訪問エリア内のアクセス・移動時間を確認している

制度・運営

  • 人員基準・設備基準・運営基準を理解している
  • 介護報酬・診療報酬の算定ルールを把握している
  • 運営規程、契約書、重要事項説明書を準備している
  • 個人情報保護の管理体制を構築している

訪問看護ステーション開業の失敗に関するよくある質問

Q. 訪問看護ステーションの廃業率はどれくらいですか?

厚生労働省の調査によると、訪問看護ステーションは毎年一定数が廃止・休止となっています。全国訪問看護事業協会の統計では、年間約600件前後の事業所が廃止届を提出しています。開業から3年以内に廃業するケースも少なくなく、十分な事前準備が重要です。

Q. 訪問看護の開業で最も失敗しやすいポイントは何ですか?

最も多い失敗要因は「運転資金の不足」と「看護師の採用・定着の失敗」です。介護報酬の入金は翌々月になるため、最低でも6ヶ月分の運転資金を確保する必要があります。また、看護師が定着せず人員基準を満たせなくなると、事業の継続そのものが困難になります。

Q. 開業前にどのくらいの運転資金を用意すべきですか?

最低でも6ヶ月分、理想的には12ヶ月分の運転資金を確保することが推奨されます。看護師3名体制で月々のランニングコストが約120〜160万円の場合、6ヶ月分で約720〜960万円が目安となります。開業資金の詳細もご参照ください。

Q. 看護師が集まらない場合はどうすればよいですか?

看護師の採用には複数のチャネルを組み合わせることが有効です。看護師専門の求人サイト、ハローワーク、知人からの紹介、SNSでの情報発信などを併用しましょう。また、働きやすい勤務条件の整備や、訪問看護の魅力を発信するホームページの充実も重要なポイントです。

Q. 訪問看護の開業で失敗を防ぐために最初にやるべきことは何ですか?

まずは十分な情報収集と事業計画の策定が重要です。地域の競合状況や需要の調査、具体的な収支シミュレーション、人材確保の計画を事前にしっかりと行いましょう。また、すでに開業している訪問看護ステーションの管理者への相談や、自治体の開業支援窓口への事前相談も有効です。

まとめ -- 訪問看護ステーション開業の失敗を防ぐために

訪問看護ステーションの開業で失敗する原因は、大きく以下の5つに集約されます。

  1. 資金計画の甘さ -- 運転資金不足による経営破綻
  2. 人材確保・定着の失敗 -- 看護師が集まらない・辞めてしまう
  3. 営業・集客不足 -- 利用者が増えない
  4. 立地選びのミス -- 需要と競合を見誤る
  5. 制度理解・運営知識の不足 -- ルール違反による行政処分

これらの失敗原因は、開業前の準備段階で対策を講じることで多くが回避できます。事業計画の策定、十分な資金確保、採用計画、営業戦略、制度の理解--どれも地道な作業ですが、この準備の質が開業後の経営を左右します。

訪問看護の需要は今後も拡大が見込まれており、しっかりとした準備のもとで開業すれば、地域に貢献しながら安定した経営を実現できる事業です。この記事で紹介したチェックリストを活用し、開業のリスクを最小限に抑えた上で、着実に準備を進めていきましょう。

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参考・出典

この記事の監修

この記事は、訪問看護業界に精通した医療職を含むほうかんWEB編集チームが監修しています。掲載情報は公的機関の資料に基づいていますが、制度の詳細は自治体により異なる場合があります。最新情報は管轄の自治体へお問い合わせください。