訪問看護ステーションの経営において、各種加算を正しく算定できるかどうかは売上に大きく影響します。基本報酬だけでは十分な収益を確保しにくい一方、加算の算定を適切に行えば月間20万~40万円以上の上乗せが見込めるケースも珍しくありません。しかし、加算の種類は多岐にわたり、算定要件や届出の有無を正確に把握するのは容易ではないのが実情です。この記事では、訪問看護で算定できる主要な加算を一覧表で整理し、それぞれの算定要件と単位数の目安をわかりやすく解説します。

本記事に記載の単位数・金額は一般的な目安です。介護報酬・診療報酬は定期的に改定が行われるため、算定の際は最新の改定内容を必ずご確認ください。正確な単位数は厚生労働省の介護報酬に関するページでご確認いただけます。

訪問看護の加算とは?基本報酬との違い

訪問看護の報酬は、「基本報酬」と「加算」の2つで構成されています。基本報酬は訪問時間に応じて定められた報酬で、すべての訪問に対して算定されるものです。一方、加算は特定の条件を満たした場合に基本報酬に上乗せされる報酬を指します。

たとえば、24時間対応できる体制を整備していれば「緊急時訪問看護加算」が算定でき、医療的ケアが必要な利用者には「特別管理加算」が算定できます。つまり、ステーションの体制や利用者の状態に応じて、基本報酬の上に複数の加算を積み重ねることが可能です。

加算を算定するには、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。加算によっては事前に地方厚生局への届出が必要なもの、届出不要で要件を満たせば請求できるものなど、手続きも異なります。加算の仕組みを正しく理解しておくことは、訪問看護ステーションの安定した経営に直結します。収支全体の構造については収支シミュレーションの記事もご参照ください。

開業初期から算定しやすい加算一覧

訪問看護ステーションの開業直後でも、体制を整えれば比較的早い段階から算定を始められる加算があります。まずはこれらを確実に押さえることが、安定経営への第一歩です。以下は介護保険における主な加算です。

加算名 単位数(目安) 概要
緊急時訪問看護加算 574単位/月 24時間連絡・対応できる体制を整備し、届出を行った場合に利用者1人あたり月額で算定
特別管理加算(I) 500単位/月 在宅気管切開、人工呼吸器使用など、特に重度な医療的ケアが必要な利用者に対して算定
特別管理加算(II) 250単位/月 在宅酸素療法、留置カテーテル管理、褥瘡のある利用者等に対して算定
ターミナルケア加算 2,000単位/回 在宅で亡くなった利用者に対し、死亡日前14日以内に2回以上の訪問看護を実施した場合に算定(届出不要)
初回加算 300単位/回 新規に訪問看護計画書を作成した利用者の初回訪問時に算定(届出不要)
退院時共同指導加算 600単位/回 退院前に病院スタッフと共同で在宅療養の指導を行った場合に算定
長時間訪問看護加算 300単位/回 特別管理加算の対象者に対して、1回の訪問が90分を超えた場合に算定

上記のうち、緊急時訪問看護加算と特別管理加算は届出が必要ですが、24時間対応の電話体制と対象利用者がいれば開業初期でも届出は可能です。ターミナルケア加算や初回加算は届出不要で、算定要件を満たした時点で請求できます。開業の手続き全般については届出・手続きガイドをあわせてご確認ください。

体制・届出が必要な加算一覧

一定の人員配置や運営体制の基準を満たすことで算定できる加算もあります。これらは開業直後では難しい場合もありますが、事業が軌道に乗ってきた段階で取得を目指したい加算です。

加算名 単位数(目安) 概要・主な要件
サービス提供体制強化加算(I) 6単位/回 勤続7年以上の職員が30%以上在籍している場合に算定
サービス提供体制強化加算(II) 3単位/回 勤続3年以上の職員が30%以上在籍している場合に算定
看護体制強化加算(I) 550単位/月 緊急時訪問看護加算の算定割合が50%以上、特別管理加算の算定割合が20%以上、ターミナルケア加算の算定実績が一定数以上等
看護体制強化加算(II) 200単位/月 看護体制強化加算(I)の要件を一部緩和した区分。緊急時訪問看護加算の算定割合が50%以上等
複数名訪問看護加算 254~402単位/回 利用者の体重が重い場合や暴力行為がある場合など、複数名での訪問が必要な場合に算定。看護師同士の組み合わせで単位数が異なる

機能強化型訪問看護管理療養費の要件を満たすステーションは、さらに高い報酬を算定できますが、常勤看護師7名以上の配置や24時間対応の実績など、相応の体制が求められます。将来的な経営計画に組み込む形で、段階的に体制強化を目指すのがよいでしょう。

加算を正しく算定し経営を安定させるために、集客の土台となるホームページを整えませんか?

無料相談はこちら
料金プランを確認する

医療保険の主な加算一覧

医療保険で訪問看護を利用する方(小児、難病指定の方、がん末期の方など)に対しても、各種加算を算定できます。介護保険の加算とは名称や金額が異なるため、別途把握しておく必要があります。

加算名 金額(目安) 概要
24時間対応体制加算 6,400円/月 介護保険の緊急時訪問看護加算に相当。24時間連絡・緊急訪問できる体制を整備した場合に算定
特別管理加算 2,500円~5,000円/月 重度の医療的ケアが必要な利用者に対して算定。介護保険と同様にI・IIの区分あり
複数名訪問看護加算 4,500円/回 2名以上で訪問が必要な場合に算定。看護師と看護補助者の組み合わせで金額が異なる
退院支援指導加算 6,000円/回 退院日に在宅療養の指導を行った場合に算定
訪問看護ターミナルケア療養費 25,000円/回 在宅で亡くなった利用者に対し、死亡日前14日以内に2回以上の訪問を実施した場合に算定
訪問看護情報提供療養費 1,500円/月 市町村や学校等に利用者の情報を提供した場合に算定

医療保険の加算は金額ベースで設定されており、介護保険の「単位」とは異なる点に注意が必要です。訪問看護ターミナルケア療養費は1回あたり25,000円と高額であり、看取りの実績はステーションの信頼にもつながります。介護保険と医療保険の違いについては保険制度の違いを解説した記事もご参照ください。

主要加算の算定要件まとめ表

ここまで紹介した主要な加算について、算定要件のポイントと届出の要否を一覧表にまとめました。算定漏れの防止にお役立てください。

加算名 保険区分 届出 主な算定要件
緊急時訪問看護加算 介護 必要 24時間連絡できる体制を確保し、緊急時の訪問が可能な体制を整備。利用者への説明と同意を取得
24時間対応体制加算 医療 必要 24時間連絡・対応できる体制を確保。担当看護師の氏名を利用者に文書で通知
特別管理加算(I/II) 介護/医療 必要 在宅気管切開・人工呼吸器(I)、在宅酸素・留置カテーテル・褥瘡等(II)の管理が必要な利用者が対象
ターミナルケア加算 介護 不要 死亡日前14日以内に2回以上の訪問看護を実施。主治医との連携を確認。利用者・家族の同意
初回加算 介護 不要 新規利用者に対して訪問看護計画書を作成し、初回の訪問看護を実施した月に算定
退院時共同指導加算 介護 不要 入院中の利用者について、退院前に病院スタッフと共同で指導を実施。文書で記録を残す
看護体制強化加算 介護 必要 緊急時訪問看護加算・特別管理加算の算定割合が基準以上。ターミナルケア加算の実績が一定数以上
サービス提供体制強化加算 介護 必要 勤続年数の長い職員の割合が一定基準以上(勤続7年以上30%以上、または勤続3年以上30%以上)

届出が必要な加算については、サービス開始前に管轄の地方厚生局へ届出書類を提出する必要があります。届出が受理されてはじめて算定が可能になるため、開業準備の段階から届出スケジュールを計画に組み込むことが大切です。

加算を取りこぼさないためのポイント

加算の算定要件を満たしているにもかかわらず、請求漏れが発生しているケースは少なくありません。医療の現場を知るチームの視点から、取りこぼしを防ぐためのポイントを整理します。

1. 届出の漏れを防ぐ

緊急時訪問看護加算や特別管理加算など、届出が必要な加算は、体制を整えた時点で速やかに届出を行いましょう。届出が遅れた期間は算定できないため、利用者がいるのに請求できないという事態を避ける必要があります。開業時にまとめて届出を行うのが効率的です。

2. 記録の整備を徹底する

加算の算定には、訪問看護記録や報告書への適切な記載が求められます。特にターミナルケア加算では、死亡日前14日以内の訪問記録が必須です。日々の記録が不十分だと、後から算定しようとしても根拠が不足して請求できないことがあります。

3. スタッフ間で算定要件を共有する

管理者だけが加算の知識を持っていても、現場のスタッフが算定要件を理解していなければ、対象となる利用者を見落とす可能性があります。定期的な勉強会やチェックリストの活用で、チーム全体の算定意識を高めましょう。

4. 請求ソフトの設定を定期的に見直す

電子カルテや請求ソフトに加算の自動算定機能がある場合でも、設定ミスや登録漏れがないか定期的に確認することが重要です。新規利用者の受け入れ時には、その都度、算定可能な加算を洗い出す作業をルーティン化しましょう。

レセプト請求前のダブルチェックが有効です。毎月のレセプト請求前に、利用者ごとの算定状況を一覧表で確認する運用を取り入れると、取りこぼしを大幅に減らせます。チェック用のテンプレートを作っておくと便利です。

加算が売上に与える影響(試算例)

加算をしっかり算定した場合と、基本報酬のみの場合とで、月間売上にどのくらいの差が出るのかを試算してみましょう。以下は、看護師3名体制(利用者30名)の訪問看護ステーションを想定した例です。

加算項目 算定条件(例) 月額上乗せ(目安)
緊急時訪問看護加算(574単位) 利用者30名中25名に算定 約143,500円
特別管理加算 II(250単位) 利用者30名中8名に算定 約20,000円
看護体制強化加算 II(200単位) 利用者30名に算定 約60,000円
サービス提供体制強化加算(6単位) 月間250回の訪問に算定 約15,000円
加算による月額上乗せ合計 -- 約238,500円

この試算では、主要な加算だけで月間約24万円の上乗せとなります。年間に換算すると約286万円もの差が生まれる計算です。ターミナルケア加算(1件あたり約2万円)が発生すればさらに上積みされます。加算の算定は「利益率を上げるための最も確実な手段のひとつ」といえます。

売上全体のシミュレーションについて詳しく知りたい方は、収支シミュレーションの記事もあわせてご覧ください。また、集客の土台となるホームページの制作内容料金プランもご確認いただけます。

よくある質問

Q. 訪問看護の加算は全部でいくつありますか?

介護保険・医療保険を合わせると数十種類の加算があります。ただし、すべてを算定できるわけではなく、ステーションの体制や利用者の状態に応じて算定可能なものが決まります。開業初期はまず緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算など主要な加算から取り組むのが一般的です。

Q. 加算を算定するには届出が必要ですか?

加算の種類によります。緊急時訪問看護加算や特別管理加算は届出が必要ですが、初回加算やターミナルケア加算のように届出不要で算定要件を満たせば請求できるものもあります。各加算の届出要否は事前に地域の厚生局や自治体に確認することをおすすめします。

Q. 加算の算定でどのくらい売上が変わりますか?

加算の算定状況によっては、基本報酬のみの場合と比べて月間売上が20万~40万円以上増えるケースもあります。たとえば、緊急時訪問看護加算を利用者25名に算定するだけで月額約14万円の上乗せとなります。取りこぼしなく算定することが経営に直結します。

Q. 開業直後でも算定できる加算はありますか?

はい、あります。緊急時訪問看護加算は24時間連絡できる体制を整えれば開業直後から届出可能です。また、初回加算や退院時共同指導加算なども利用者の状況に応じて算定できます。体制要件が比較的整えやすい加算から順番に取り組みましょう。

Q. 介護保険と医療保険で加算の種類は違いますか?

はい、名称や算定要件が異なります。たとえば介護保険では「緊急時訪問看護加算」ですが、医療保険では「24時間対応体制加算」という名称で、それぞれ単位数や金額が異なります。どちらの保険で算定するかによって請求方法も変わるため、利用者ごとに適用される保険を確認することが大切です。

まとめ

訪問看護の加算について、改めて要点を整理します。

  • 加算は基本報酬に上乗せされる報酬。ステーションの体制や利用者の状態に応じて算定可能
  • 開業初期から算定しやすい加算は、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算・初回加算など
  • 看護体制強化加算やサービス提供体制強化加算は、事業が安定してから段階的に取得を目指す
  • 医療保険の加算は介護保険と名称・金額が異なるため、別途把握が必要
  • 加算の取りこぼし防止には、届出管理・記録整備・スタッフ教育・請求前チェックが有効
  • 主要な加算を確実に算定することで、月間20万~40万円以上の売上アップが見込める

加算の単位数や算定要件は介護報酬・診療報酬の改定によって変更されることがあります。算定にあたっては、必ず最新の介護報酬改定の内容をご確認ください。訪問看護ステーションの経営を安定させるためには、加算の算定強化と合わせて、集客の土台となるホームページの整備も重要です。開業から経営安定まで、お気軽にご相談ください。

訪問看護専門のHP制作、初期費用5万円から。まずはお気軽にご相談ください

無料で相談する
料金プランを確認する

この記事を監修したチーム

ほうかんWEB編集部 ── 訪問看護の現場経験を持つ医療職と、医療広告ガイドラインに精通したHP制作の専門チームが共同で記事を作成・監修しています。

参考・出典